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伝説のショップ店員

2016年6月20日

今回はぼくのような全盲の視覚障害者がパソコンを選ぶうえで注意すべきポイントを書いておきます。
なーんて言っても普通の人がパソコンを選ぶのとあまり変わらないんだけどね(笑)。

まずは、どこで買うのか?
インターネットで買うのか、それとも実際のショップに足を運んで買うのか。

ぼくのおすすめは、まずショップに行って実際に気になるパソコンを触ってみる。
できれば店員さんといろいろ話をして情報を集める。
そうして買いたいパソコンが決まったら、インターネットで注文するのがいちばん効率的だ。

だいたいこの方法でうまくいくんだけど、中には例外もある。
どういうことかというと、たまにすごい店員がいるパソコンショップがあるのだ。
こんな伝説的なパソコンショップ店員に出会ってしまったら、効率なんて無視してしまおう。

すごいパソコンショップの店員というと、ぼくはいつも彼のことを思い出す。

実はぼくは目が見えなくなった当時、見えていたころ使っていた自分のパソコンに前もってスクリーンリーダー(画面読み上げソフト)を入れておかなかった。
なんてのんきな話だろう、当時の自分ってすげー(苦笑)。

いいわけするとだねー…。
今は無料のスクリーンリーダーがあるけど、当時は無料のものなんてない上に高額だった。
だから自分のパソコンにスクリーンリーダーを入れたくてもそんな余裕なんてなかった。

そんなわけで、目が見えなくなったぼくがパソコンを使おうと思ったら、まずはスクリーンリーダーを入手するところからスタートしなくてはいけなかった。

でもスクリーンリーダーは一般的なソフトウェアじゃないから、マイクロソフトのオフィスみたいにパソコンショップに行けば簡単に手に入るというものではない。
当時実際にショップ店員にスクリーンリーダーのことを聞いても全然知らなかった。

あきらめて視覚障害者専用の道具を販売しているところから手に入れるしかないかなーっと思っていたら、そいつはやってきた。
彼もショップ店員でスクリーンリーダーなんて聞いたことなかったらしいのだが、そこからの行動が素晴らしかった。

ぼくからスクリーンリーダーのことを聞いた彼は、ショップのパソコンを使ってなにやら調べ始めた。
そしてすぐに…。
「あー、スクリーンリーダーありました。PCトーカーとか、お客様がおっしゃっていたJawsもありましたよ。」
と言った。

当時はまだインターネットが今より普及していなかったので…。
こんな短時間で調べるなんてさすがパソコンショップの店員だなーっと感心した。

そして彼は続けた。
「商品は取り寄せになります。購入の際は、日常生活用具給付の申請もなさいますか?」
と聞いたのだ。

ぼくは驚いて…
「できるんですか?」
と逆にショップ店員に聞き返してしまったぐらいだ(笑)。

わからない人のために説明しよう。
日常生活用具給付とは、スクリーンリーダーのような特殊で高額な商品については、購入する障害者の所得に応じて補助金が出る制度である。

彼は「ちょっとお待ちください」といって、どこかに電話をかけ始めた。
聞き耳を立てていると、電話の向こうはスクリーンリーダーの販売元みたいだ。

話の内容はスクリーンリーダー購入時に役所に出す日常生活用具給付の申請方法についてみたいだ。
販売ページに書いてあったらしく、彼がネホリハホリ聞き出しながらひたすらメモを取っている。
最後に彼は「ありがとうございました。それでは失礼いたします!」と言って電話を切った。

その後、彼は先ほど書いたメモを見ながら日常生活用具給付の申請方法について説明してくれた。
さらに、申請書類の中には購入商品のカタログなども必要だったのだが、それらも用意してくれた。

こうしてぼくはスクリーンリーダーを買うことができた。

正直ここまでしてくれるとは思わなかった。
ぼくも男だ。ここまでしてもらってそれっきりというわけにはいかなかったので、しばらくショップでパソコンを購入し続けたのだった。